DIT ;Dynamic Interpersonal Therapy

「Scan0093.pdf」

この論文で扱っているのは DIT ;Dynamic Interpersonal Therapy というもの
対人関係療法は IPT Interpersonal Psychotherapy というもので そこにdynamic をかぶせている
力動的 という意味で 要するに精神分析的 という意味合いだろう
 psychodynamic-interpersonal therapy (PIT) という表現もあり、別の言い方をしているのだから
違いの理由があるのだろう

IPTの歴史について読んでみると、最初期には精神力動的技法を用いているが
IPT独自のフォーミュレーションのしかた、4つの領域の扱い方、医学モデルの採用など
独自の道を切り開いてきた

しかしまたIPTが有効であれば、その技法と精神分析的技法のいいところを
融合させようと発想するのは自然だし
そのように意識しなくても、
診療している中で、技法としてはIPT的だとしても、治療者の意識としては
精神分析的センスを持ちつつということになるかもしれない

とても若い人は別かもしれないが
昔は精神療法といえばフロイトの流れとロジャースの流れが二つの大きな水源だったはずだ

どうせ暗黙のうちに考えているだから
きちんと考えてみようとする人達がいても自然である

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DITは精神分析的短期精神療法の一つであり
a 行動は無意識により決定されている
b 内的及び外的影響が思考や感情を形成するのだから、人間は、他者との関係において、自己認知を形成する
c 成人の対人関係のし方は、子供時代の、特に家族との体験に起源がある
d 種々の防衛機制や投影性同一視や摂取性同一視(メラニー・クライン)のような無意識の過程が対人関係の主観的経験を裏打ちしている
e 行動や感情体験を心の状態の用語で考えることには著明な治療効果がある
f 治療は治療者と患者の関係を含む、現在の対人関係に焦点を当てる
といった項目を16回の面接の中で取り扱う

うつ状態の人は多かれ少なかれ対人関係に困難を抱えている
これが出発点である

うつの症状は対人関係の困難への反応として捉えられる
また愛着と愛着の喪失、分離への反応である

こうした脅威があると内界についても外界についても明確に現実的に考えることが難しくなる

愛着に関連した対人関係脅威

DITではうつの症状を対人関係の障害のあらわれとしてみる

重要で反復する無意識の対人関係パターン(IPAF;Interpersonal affective focus)を把握するのが第一期で1-4回

患者の心理内での特定の自他の関係が活性化されたことへの反応として感情を理解できる

対象関係論、カーンバーグの考えが近い

中期 5-12回では IPAFを「徹底操作」する

生活の中での重要に他者との関係はIPAFの反復であるし、治療関係も同様に反復である

心理の内部状態を認知する、そしてそれを現実の出来事やIPAFと関係付ける

終了期に 13-16回 をあてる

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こうしてみると、非常に分析寄り。こんな感じのほうがやり易いという人も多いだろうと思う。

勉強してきた人ほど、いまさら分析を捨てられないのも、理解できる

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何が対人関係療法で何が対人関係療法でないかがどんどん難しくなる
Interpersonal を扱っている限り、名乗って良いのだとする人達もいるようである

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IPTとDITについて
共通点としては
うつの原因については仮説を立てない
うつがある人には多くの場合対人関係の障害が見られる
そこで対人関係を改善できるように援助する
うつの原因に対してアプローチするのではない

違いとしては
IPTでは対人関係障害の4つの領域を考えるのに対して
DITでは「重要で反復する無意識の対人関係パターン」(IPAF;Interpersonal affective focus)を
抽出して、それについて過去・現在・診察室で徹底操作する
つまり転移逆転移も扱う

また
IPTではコミュニケーション分析を詳細に行う
DITはコミュニケーション特性の背後には過去の体験があり、その反復としてとらえる

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DITをうけた人によれば
対人関係の感情面を強調するのが大事
対人関係を怠っていた人では対人関係パターンを知ることが大切であった
対人関係において信頼感を感じるのが大切
対人関係の葛藤を何とかやりくりできること