マタイ受難曲

マタイ受難曲の話

その男性は妻を突然亡くして
抑うつ的になり
マタイ受難曲を繰り返し聴き続けた
そう思って聞いてみると
やはり抑うつ的なのかもしれない
昔から有名なカール・リヒターなどは特にそうかもしれない
その男性はその後、完全回復することなく
脳血管障害を起こして亡くなってしまった
このような場合、生活史上のエピソードがきっかけになり
うつ状態が始まり、それが遷延したものと考えても悪くないように思う
この場合は、このエピソードの瞬間から脳細胞の疲労が始まったのであって
疲労の結果のうつではないところが解釈の難しいところだ
失恋したという場合は
失恋の前に恋愛状態があって
躁状態に似た時期もあったのだろうと解釈できないこともない
しかしこの男性のように突然配偶者を亡くすとか
突然失業する
突然地震と津波に襲われる
そのような状況はやはりあるわけだし
そこから始まる抑うつはやはりあると思うので
どのようなメカニズムなのかと思う
単純に考えれば、やはり気持ちは大いに沈むわけだし、神や運命に対する憤りとかもあるわけだし
そのあとの生活上の困難は実際に小さくなくて
栄養不良や金銭的な貧困や情報の貧困などがあり
脳が萎縮してゆくのだろう
配偶者、職業、家を失うといった事態はそのような複合的な影響を引き起こす
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思うのだが
配偶者の死、失業、家の喪失など、突然の喪失体験は
悲しいのはもちろんだけれど
反応性の躁状態に似たものを引き起こすかもしれない
お葬式のことで忙しくなったり
財産問題でいろいろとあったり、
新しい環境に適応せざるを得なかったり
その局面だけを考えると脳内の状態としては
躁状態に近いとも考えられる
そのあと本格的なうつ状態が始まると解釈すれば
理解はしやすい
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配偶者の死、失業、家の喪失などは
失恋よりは一段大きな衝撃で生活そのものが変わってしまうのだけれども
自我機能に与えるダメージとしては失恋もなかなか大きい
配偶者の突然の死とか地震や津波とかは
体験者には特に責任がない
自我の傷つきにはならない
しかし失恋となればやはり
異性として自分が選択されなかったという敗北の感情が先に立つだろう
否認したり合理化したりして必死に自分を守るのもそのせいである
恋愛で躁状態が始まり
失恋でうつ状態が始まるとすれば
それはそれで常識的にはとても理解しやすいのだが
理論としてはすっきり説明しきれない
こてこてで声量豊富
ここで言う、罪を知らないとは、かなり限定された具体的な意味だと
関西弁にするとよくわかる