偶然摂食障害の話題が続きますが、今回はその原因は「環境要因」なのか? 「体質要因」(遺伝要因)なのか? というものです。
摂食障害の患者と関わっていると、家族状況が非常に困難であったり、あまり幸福とは言えない生育歴を持っていたりします。 患者自身、自分の精神的な苦痛の原因は家族との問題にあると感じていることも多いこともあって、私たち精神科の専門家も非常に容易に「環境要因」を重視してしまいます。 一時期は、摂食障害はパーソナリティー障害と同様に、生育した家族関係に問題があったために生じた一種の慢性ストレス障害なのではないか? という見方さえあったほどです。
ところが、近年になって遺伝的・生物学的研究がさかんになってくると、摂食障害についても「環境要因」よりも「体質要因」が大きな原因となっていることを示唆する研究がたくさんあがってくるようになりました。
Bulik CM. Exploring the gene-environment nexus in eating disorders. J Psychiatry Neurosci, 2005; 30: 335-339.
では過去の双子研究などの研究を非常によくまとめてレビューしています。 結論を要すると、摂食障害には強い家族性(摂食障害の家族歴がある人ではそうでない人の10倍ものリスクがある)があるが、その大きな部分は遺伝的・体質的要因(30%~80%)であり、その他の部分が個別的環境要因であり、家族環境など家族で共有される環境要因はほとんど原因となってはいない・・・、という臨床的な印象とは全然違った結果を導き出しています。
意外と言えば意外な話ではあります。著者も論文の冒頭でこんな風に述べています:『この数十年の間、摂食障害の原因は社会や家族のせいだとされてきた。これらの環境要因が摂食障害の発病に影響を与えていることは疑いないことであるが、それらが原因であったとは言えないのである。このように病気を単純化して考えることは、一見そう見えるからという理由で因果関係を考えてしまうことのよくある落とし穴であり、臨床家も研究者も摂食障害の原因について一見当然な説明を簡単に受け入れてしまっていたのである。』
一方で、特に小児・思春期の摂食障害の治療としては家族療法が効果的であることも知られているのも確かです。 この事実は一見すると「家族環境が原因ではない」という事実と矛盾する気もします。
つまり、家族が「原因」であると言えるわけではないにしろ、家族に働きかけ、そこにある問題を解決していくことは(小児・思春期の患者にとっては)役に立つことではあるのです。
いずれにしろ、臨床家にとっては何が原因か? という問題は学問的興味以上の価値はありません。大切なのは、どうしたら治るのか? どのような考え方で、どのようにアプローチするのが治療促進的であり、逆にどのようなやり方は反治療的であるのか? ということですから。
(※小児・思春期の摂食障害に対しては家族療法が効果をあげることが知られています。子どもに現れる「摂食障害」という症状は、子ども個人の病気というよりもむしろ家族全体の病気を表しているのだ、「治療」を必要としているのは「患者」である子どもだけではなく、家族全体なのだ、と考えた方がうまくいくわけです。 しかしこれまでの研究では、大人の摂食障害患者の治療については家族療法はあまり効果をあげないことが示唆されてもいます。)
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という意見である。
まだよくわからないのだが、わからなくても治療は進めたいので
工夫が必要になる
原因は当然だが一種類ではなくていろいろだと思う
あとえば、歩けないという症状にしても、いろいろと原因はあるわけだから