いじめ・いじめられと遺伝的・体質的要因

  「いじめ」は一種の反社会的行動と考えることができるわけですが、反社会的行動傾向は、相当の部分が遺伝的・体質的要因によるものであることが分かっています。 (よく裁判など法律の世界では育った環境の不幸さ劣悪さなどが情状酌量の材料に使われたりしますが、科学的な研究の結果からは、生育環境・家庭環境の要因はその人の反社会的な性格傾向の形成にほとんど関係しないことが何度も何度も繰り返し示されているのです。)
  
  そして、不幸な目に遭ってしまう行動パターンが遺伝的・体質的要因によって影響されていることが、今回の子どものいじめの問題でも示されたわけです。 同年代の子ども達から「いじめ」行動を誘発するような、何らかの対人関係行動傾向、性格傾向が遺伝的・体質的要因によって存在するようなのです。 
  ただ、こういう研究結果が出ると、特に素人の人たちは、すぐに単純化した考え方になってしまうものです。 いじめはいじめられる方が性格的に悪いからだとか、遺伝的・体質的要因によって決定されているならどうしようもない、直しようもないじゃないかとか。 おそらくそんな話になってしまわないようにと配慮してのことでしょう、この研究の著者らは、最後になかなか良いことを付け加えていました:『この研究の結果によって示された、(いじめ問題に関して)遺伝的影響が大きいという事実は、この問題は直しようがないということを意味してはいない。 むしろ、その子どもの性格傾向の問題をいじめをなくすための介入の標的と考えるべきことを示唆しているのである。 いじめをなくすための介入はいじめる側だけではなく、いじめられる側も対象にするべきである。 なぜなら、いじめの標的にされてしまうのは単純な「不幸」だけではない要因が絡んでいそうだからである。』
  そして、この同じ研究者は、2010年に出した別の論文、
Bowes L, et al.  Families promote emotional and behavioral resilience to bullying: evidence of an environmental effect.  J Clin Psychol Psychiatry, 2010
  では、いじめられを経験した子どもも、家族の暖かい支えがあると、そのことで心に傷を作ってしまうことが少なくなる傾向があることも示しています。
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とのことだ