母を訪ねて三千里

母を訪ねて三千里

病と貧困が人を襲い、人はただ翻弄されるのだが
その過程ではわずかながら慰めもある
愛も優しさも中を切ってみると病と貧困が詰まっている
ロッシ少年は気分屋で、というのは穏やかな言い方で、思いつめて旅に出てしまうのであるから
一種の病気なのだろう
ロッシの父は診療所を経営している事務長で夢想家
暴力を振るう飲んだくれのせいで機能不全家庭になっているのではないが
あきらかに過剰な夢想のせいで機能不全家庭になっている
もっと中庸を生きられないかねぇ
酒飲み暴力夫の反転図である
不都合には変わりはない
むしろ自分は正しいと信じている分、罪は重い
ロッシの母は夫の借金を返すためにアルゼンチンに出稼ぎに行くという共依存ぶり
ロッシ、おまえさ、三千里も離れた場所にいたい母親の気持ちくらいわかってやれよ
逆に三千里も離れてほっとしていたのに
まだしつこく追ってくるなんて
何というゾンビなのだろうと母はぞっとしたことだろう
コンチェッタというグラマーな美人を登場させて出ずっぱりにさせているところからも分かるように
リビドー説に忠実な物語である
当然父と子と母の血まみれのギリシャ悲劇オイディプスの物語が遠くに響いている