拒食症と言っても実はいろいろあって 各症例に各治療法の適応を考慮すればいいはず

  摂食障害の中でも、体重が極端に落ち、激ヤセや太ることへの強い恐怖心と抵抗があり、食事を取ることを極端に拒否することが特徴である「拒食症」(=神経性無食欲症anorexia nervosa)は、過食嘔吐症などよりも治療が難しく、生命の危険も高く、いろいろな意味で難しい疾患であることが知られてきました。
  では、どんな治療が有効なのか? これまでの研究で過食嘔吐症については、(少なくとも表面的に現れる摂食行動の異常などの症状の軽減という面では)摂食行動について直接的に扱う認知行動療法 Cognitive Behavior Therapyが効果的であることが知られていました。 過食嘔吐の背景には対人関係葛藤がベースにあることが多いことが関係しているのでしょうが、対人関係精神療法 Interpersonal Psychotherapyも効果をあげていました。 すると、その類推から「拒食症」においても、これらの特定の精神療法が一般的・非特異的な精神療法(支持的精神療法)よりも効果が高いだろう、との予測にもとづいて、McIntosh VVWらの研究が行われました。
McIntosh VVW, et al. Three psychotherapies for anorexia nervosa: a randomized, contolled trial. Am J Psychiatry, 2005; 162: 741-747.
  この研究では「拒食症」の患者56名を対象に、摂食障害に特殊化させた認知行動療法を受けさせた群、摂食障害に特殊化させた対人関係精神療法を受けさせた群、そして摂食障害患者向けにつくられた一般的支持的精神療法を受けさせた群、とでその治療効果を比較しています。
  驚いたことに、研究者の予測を裏切り、摂食障害の症状も、全般的機能も、抑うつ症状も、ほとんど全ての点で一般的支持的精神療法を受けた群の方が治療成績が良かったのです。 一体何故なのか??
  何故なのかは良く分かりませんが、著者らは以下のように議論しています:
  『支持的精神療法では、(一般的な心理教育的アプローチを行った後は)面接の中で何を話し合うかは患者の自由な選択に任されたため、一般的支持的精神療法では患者の自律感や自己コントロール感をより良好に向上することができたのかもしれない。 また支持的精神療法には、治療同盟を重視すること、共感を重視すること、患者に対するポジティブな尊敬の気持ちを持つこと、そして支持をすることなどの重要な治療因子があるからかもしれない。』
  『結論として、特定の疾患に対して特殊化された治療法が必ずより有効であると考えることには注意が必要である、ということをこの研究の結果は示唆している。』
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こんな記事であるが
私の意見は
拒食症と言っても実はいろいろあって
各症例に各治療法の適応を考慮すればいいはず
その判断がまだ未成熟だということなのだろうと思う
患者の自律感や自己コントロール感をより良好に向上
させるようなやり方の認知行動療法や対人関係療法を工夫することができるので
最後のコメントはあまり有効ではないと思われる