論文抄読の時間

論文抄読の時間

https://sites.google.com/site/isaokajimaphd/articles/depression より 採録

Carvalho JP, Hopko DR (2011). Behavioral theory of depression: Reinforcement as a mediating variable between avoidance and depression. Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry, 42, 154-162.
背景:うつ病の行動理論では,特定の環境変化や回避行動によって,環境からの報酬や強化の経験が妨げられ,うつ病症状の発症・維持につながると仮定している。
目的:本研究では,回避行動と抑うつ症状の間に,環境からの報酬が媒介するかどうかを検討した。
方法:158名の大学生を対象に,回避尺度(CBAS),報酬尺度(RPI;反応に随伴する正の強化への接近のような環境からの報酬を測定),実際の報酬の得られる活動を行った時間(日常活動),抑うつ症状(BDI-II),身体不安(BAI;不安と回避の関係を統制するため)を実施。
結果:①CBASとBDIの間に正の相関(0.68~0.75),②CBASとRPI(-0.60~-0.78),日常活動(-0.29~-0.33)に負の相関,BDIとRPI(-0.65~-0.79),日常活動(-0.32)に負の相関がみられ,BAIを統制した偏相関でも関係性は変わらなかった。ブートストラップ法を用いて媒介分析を行った(n=158; 5000 bootstrap sample)結果,CBASとBDIの間にRPIと日常活動が媒介することが分かった(不安を統制しても同じ)。(→回避行動が増える(負の強化随伴性)と正の強化随伴性が弱くなり,報酬が得られなくなり,うつ病発症,維持へ。これは,行動活性化療法の治験を支持する。しかし,変数間の相関が高すぎる印象があることと1時点での調査であるため,どの変数を媒介変数としても結果は得られるのでは?)

Kandris E, Moulds ML (2008). Can imaginal exposure reduce intrusive memories in depression? A case study. Cognitive Behavour Therapy, 37, 216-220.

PTSDの特徴であるネガティブなライフイベントに関する侵入的記憶は,うつ病とも関連がある。うつ病の重症度は,侵入の程度と侵入的記憶からの回避の程度と関連がある。そこで,本研究では,大うつ病エピソードを持つ55歳のバツイチ男性に対して,PTSDに対する有効な治療法であるイメージエクスポージャーを実施した。この男性は,4ヵ月前に破局した後から抑うつ気分を呈し,破局直前の交際相手との最後のやりとりや交際中の会話を反すうし,破局にうまく対処できなかったという事実を頻繁に反すうしていた。治療は,週1回90分であり,心理教育,イメージエクスポージャー,将来のネガティブなライフイベントに対する再発予防で構成された。イメージエクスポージャーは,50分間,侵入的出来事についてイメージし,それを本人が語るセッションを50分実施した。出来事は情動的,身体的な再体験を引き起こすため,当時の彼の反応を述べるよう奨励した。その結果,BDI得点は,治療前(27)→治療後(12)→6ヵ月後(8)に減少し,侵入思考(23→0→8),回避(25→0→18),反すう(55→46→44)も減少した。(→うつ病発症のきっかけが明確で,その出来事が頭から離れなずに反すうが止まらない人には,イメージエクスポージャーが有効?つまり,Small traumaのようなものがあるうつ病患者には有効?)

Huffziger SH, Kuehner C (2009). Rumination, distraction, and mindful self-focus in depressed patients. Behaviour Research and Therapy, 47, 224-230.
反すうは,うつ病の発症,維持の認知的リスク要因となる。本研究では,うつ病患者の悲しい気分に対する,反すう,気ぞらし(destraction),マインドフル自己注目の効果について検討した。本研究に参加したうつ病患者76名は,3年半のフォローアップ中に,この実験に参加した。参加者には,悲しい気分連想音楽(mood-suggestive music)とネガティブな過去の体験の想起を用いて悲しい気分を誘導させた。次に,参加者を3群(反すう,気ぞらし,マインドフル)に無作為に振り分け,それぞれの行動を生じさせる思考をかいた28枚のカードを渡し,8分間カードに集中させた。その結果,気ぞらし群,マインドフル群は反すう群よりもネガティブ気分が減少し,ポジティブ気分が増加した。気ぞらしとマインドフルの間に有意な違いは見られなかった。また,習慣的な気ぞらしが最もネガティブ気分を軽減し,ポジティブ気分を増加した。習慣的なマインドフル自己注目は否定的な気分を軽減した。(→①気ぞらしは,短期的な結果になりそうだが,習慣的にやっていてもうつ気分の改善によい?②うつ病の反すうを止めるには,マインドフルネスと気ぞらしはどちらでもよい?)

Rohan KJ et al. (2007). A rondomized controlled trial of cognitive-behavioral therapy, light therapy, and their combination for seasonal affective disorder. JCCP,75,489-500.

DSM-IVの「大うつ病性障害,季節型」の診断基準を満たした患者61名を無作為に,認知行動療法(CBT),高照度光療法(LT),併用療法(CBT+LT),統制群(MCDT)に振り分け,治療後,フォローアップ(夏期)の効果を比較した。CBTは週2回,1回90分のセッションを6週間実施した。プログラムは心理教育,行動活性化,認知の再構成法,再発予防で構成された。LTは10,000ルクスの光を朝6~9時の間と夜6~9時の間にそれぞれ45分間ずつ実施した。MCDTは6週間,尺度のモニタリングを行い,その後,LTを実施した。治療前後の効果を比較した結果,CBT,LT,CBT+LT群において,季節型の評価を行う構造化面接(SIGH-SAD),抑うつ症状尺度(HAM-DとBDI-II)の得点が有意な減少を示した。また,治療後のCBT,LT,CBT+LT群の各尺度得点は,MCDT群よりも有意に軽減していた。CBT+LT群の寛解率は73%でMCDT群(20%)よりも有意に大きかった。臨床的な改善率は,CBT+LT群87%,CBT群67%,LT群63%,MCDT群27%であったが,MCDT群と有意な差が見られたのはCBT+LT群のみであった。このことから,「大うつ病性障害,季節型」の治療には,認知行動療法と高照度光療法の併用が特に効果的だといえる。

Lawlor DA & Hopker SW (2001). The effectiveness of exercise as an intervention in the management of depression: Systematic review and meta-regression analysis of randomised controlled trials. BMJ,322,763-767.

うつ病に対するエクササイズの効果について検討した無作為化比較試験論文のシステマティックレビューとメタ分析を行った。比較は,①エクササイズ群vs.治療なし群,②エクササイズvs.認知療法であった。14の研究論文に参加したほとんどの対象者はコミュニティサンプルであり,診断はBDI得点で行われていた。標準平均効果サイズを算出した結果,エクササイズは治療しないよりも抑うつ症状の改善が有意に高かった(d=-1.1)。抑うつ症状尺度としてBDIを使用した10論文に限定した場合,治療効果は非常に高いことがわかった(d=-7.3)。介入期間で治療効果を検討すると,8週間未満(d=-1.8),8週間(d=–1.3),8週間以上(d=-0.6)もっとも治療効果が高かった。エクササイズと認知療法の間に有意な違いは認められなかった(d=-0.3)。一方で,臨床群を対象とした研究がほとんど含まれていないため,臨床現場では注意が必要である。

Kaneita Y et al. (2006). The relationship between depression and sleep disturbances: A Japanese nationwide general population survey. J Clin Psychiatry,67,196-203.

うつ病と睡眠の関連について,一般人口を対象とした全国調査はほとんど行われていない。そこで本研究では,全国的な質問紙調査を実施し,24,686名からの回答をもとにうつ病と睡眠時間,主観的な満足度との関連性について検討した。その結果,抑うつと睡眠時間はU字の関係にあり,睡眠期間が6時間未満および8時間以上の者は6~8時間の睡眠の者より抑うつ得点が高かった。一方,主観的な睡眠満足感が下がるにつれて抑うつ得点は高くなることが分かった。このように睡眠時間と睡眠満足度は,抑うつ症状との関係が異なることが示された。

Wu JC et al. (2008). Sleep deprivation PET correlations of Hamilton symptom improvement ratings with changes in relative glucose metabolism in patients with depression. Journal of Affective Disorders,107,181-186.

うつ病症状に対する抗うつ薬(SSRI)と一夜の全断眠(total sleep deprivation:TSD)の組合せ効果を明らかにするため,SSRIを服用している6名のうつ病患者(双極性障害2名,大うつ病性障害4名)を対象に,全断眠前後の抑うつ症状の変化と脳代謝の変化について検討した。その結果,全断眠後の抑うつ症状尺度(HRS-D;睡眠関連項目は削除)は23.33→15.17点まで減少した。全断眠後のHRS-D得点と正の相関を示したのは下前頭回と下前頭/眼窩前頭皮質であった。負の相関を示したのは,腹外側前頭皮質であった。このことから,SSRI投与に全断眠を行う治療は,大うつ病および双極性障害に有効である。

Blumenthal JA et al. (1999). Effects of exercise training on older patients with major depression. Arch Intern Med,159,2349-2356.

うつ病に対して,有酸素運動(aerobic exercise)は効果的であることが明らかにされてきている。そこで本研究では,高齢者の大うつ病性患者を,有酸素運動群41名,SSRI(サートラリン)群39名,有酸素運動+SSRI(併用群)44名に無作為に振り分け,16週間の治療を実施した。その結果,うつ病尺度であるHAM-DとBDI得点に有意な差は見られなかったが,すべての群は,治療後に統計的,臨床的な改善を示した(治療後に診断非該当率:有酸素運動群60.4%,SSRI群68.8%,併用群65.5%)。また,SSRI群は最も早く効果が出現した。併用群のうち,重症度が軽い者は高い者よりも効果の出現が早いことが分かった。このことから,うつ病に対する16週間の有酸素運動プログラムは,薬物療法と同等の効果が期待できる。

Dobson KS. et al. (2008). Randomized trial of behavioral activation, cognitive therapy, and antidepressant medication in the prevention of relapse and recurrence in major depression. J Consult Clin Psychol,76,468-477.

Dimidjian et al. (2006)で治療に反応した患者を対象に,1年後,2年後の再発率について検討した。1年後の再発率では,認知療法群(CT;39%)は薬物療法群(治療後Placebo薬に変更;59%)よりも有意に低く,行動活性化群(BA;50%)は薬物療法群よりも低い傾向にあった。CTとBAの間に違いは認められなかった。2年後の再発率でも,CT(24%)とBA(26%)の間に違いは認められなかった。

Hopko DR. et al. (2003). A Brief behavioral activation treatment for depression: A randomized pilot trial within an Inpatient psychiatric Hospital. Behavior Modification,27,458-469.

大うつ病性障害の診断基準を満たす入院患者25名を対象に,短期行動活性化の治療効果について検討した。対象者は,行動活性化(BATD; Behav Mod,25,255-286,2001)群10名と支持的療法(SP)群15名に無作為に振り分けられ,それぞれ週1回20分,合計3セッションの治療を実施した。その結果,BATDの方がSPよりも有意にBDI得点が減少した。また,群間効果サイズは大きく(d=.73),BATDの方が治療効果が高いといえる。

Coffman SJ. et al. (2007). Extreme nonresponse in cognitive therapy: Can behavioral activation succeed where cognitive therapy fails? J Consult Clin Psychol,75,531-541.

Dimidjian et al. (2006)の結果から,自記式尺度において,一部の患者は認知療法(CT)に極端に反応しないことが示された。そこで本研究では,行動活性化(BA)とCTを受けた対象者の結果を用いて,両介入の治療反応を比較した。その結果,BA受診者は非治療反応者(BDI>31)がいなかったが,CT受診者には22%存在した。また,HRSDを用いた場合,CTの非反応者は,反応者よりも感情,認知面の得点が悪く,BAに対する反応の悪い者は,自律神経症状得点が悪かった。治療者-患者関係は,CT,BAともに非反応者の方が悪く評価していた(治療者評価,患者評価ともに)。本研究の結果から,期間を設定した治療を行う場合,行動変化に注目させた介入の方が主観的評価がよくなる患者も存在する。

Gortner ET. et al. (1998). Cognitive-behavioral Treatment for depression: Ralapse Prevention. J Consult Clin Psychol,66,377-384.

本研究はJacobson et al. (1996)で治療を受けた者のうち,137名のうつ病患者に対し,2年間のフォローアップ(6,12,18,24ヶ月)を追跡した。再発率を検討した結果,群間(BA, AT, CT)に有意な差は認められなかったが,24ヶ月時点で,BAの再発率は35.7%であるのに対し,AT52.6%,CT46.4% であった。BDI,HRSDの得点に違いは認められなかった。このことから,再発予防の観点から,CTがより効果的であるとは考えにくいといえる。

Dimidjian S. et al. (2006). Randomized trial of behavioral activation, Cognitive therapy, and antidepressant medication in the acute treatment of adults with major depression. J Consult Clin Psychol,74,658-670.

本研究では,うつ病に対する行動活性化(BA)の治療効果を検討するために,認知療法(CT)と抗うつ薬(ADM)との比較を行った。241名のうつ病患者を対象に,16週間24セッションの治療を実施した結果,重症度が高い患者の場合,すべての治療法に有意な効果が認められたが,CTよりもBA,ADMの効果が有意に高かった。重症度が低い場合にもすべて介入で治療効果が認められ,群間に差は見られなかった。治療反応者の割合は,CTが48%,BAが76%,ADMが49%であった(指標BDI)。

Jacobson NS. et al. (1996). A component analysis of cognitive-behavioral treatment for depression. J Consult Clin Psychol,64,293-304.

うつ病に対する認知行動療法(Beck et al., 1979)の治療コンポーネントの効果を比較するため,150名の外来患者を,「行動活性化(BA)」群,「行動活性化+自動思考の修正(AT)」群,「認知行動療法(中核スキーマにも焦点を当てる;CT)」群に無作為に振り分けた。治療に当たった4名のセラピストは,CTが最も優れているに違いないと考えていたにもかかわらず,急性治療後と6ヶ月フォローアップにおいて,他の2群と違いは認められなかった。非機能的帰属スタイルと否定的な思考において,ATとCTと同程度の改善を示した。また,BAは帰属スタイルの短期的,長期的な改善を予測し,CTは楽しい出来事の頻度を増やすことがわかった。

Watkins Ed. et al. (2007). Rumination-focused cognitive behaviour therapy for residual depression: A case series. Bhav Res Ther,45,2144-2154.

うつ病の急性治療後の残遺症状の持続は,慢性うつ病と再発のリスクファクターとなる。また,反すうはうつ病の発症と維持における重要なファクターである。本研究は14名の薬物難治性の残遺型うつ病患者に対して,反すうに焦点を当てた認知行動療法を実施することを目的とした。治療は個人形式であり,週1回60分セッションを合計12回行った。治療では,(1)機能分析を用いて役に立たない考え方から役に立つ考え方にシフトする,(2)経験的/イメージ練習と行動実験を行った。その結果,抑うつ症状,反すう,合併症(不安障害など)の改善が見られ,71%が治療に反応し(HAM-Dが50%減少),50%が完全寛解に至った

Liu Z et al. (2010). One-year follow-up study of post-traumatic stress disorder among adolescents following the Wen-Chuan earthquake in China. BioScience Trends, 4, 96-102.
目的:四川省大地震で被災した中学生,高校生を対象に,被災後4,6,9,12ヶ月のPTSDの変化を調査した。
方法:1490名を対象に,PTSD Checklist-Civilian version (PCL-C; cutoff socre = 50)を実施した。
結果:各時期でのPTSDの発症率は,それぞれ11.2%, 8.8%, 6.8%, 5.7%であった。また,PTSDのリスクファクターとして,被災してからの時期の短さ,地域,学年,国籍,両親が負傷,家屋損壊が関係していた。(→時間とともにPTSD発症率が低下している。下記論文と同様に,自然治癒するのか,何らかの介入があったのか?)

Liu M et al. (2011). Mental health problems among children one-year after Sichuan earthquake in China: A follow-up study. PLoS ONE, 6, e14076.
背景と目的:2008年5月12日に起きた四川省大地震の影響を調べるため,被災6ヶ月後,1年後に四川省北川県のSichuanにある小学校を対象にPTSD,不安,うつに関する疫学調査を実施した。
方法:330名の小学生(3,4,5年生)を対象に,トラウマ症状チェックリスト(Trauma symptom checklist for children-alternate version: TSCCA)を実施。下位尺度として,不安,うつ,怒り,PTSD,乖離があり,どの下位尺度もT得点が65点以上の場合,臨床群と考えられる。
結果:6ヶ月後と1年後の有病率は不安(23.3%,22.7%),うつ(14.5%,16.1%),PTSD(11.2%,13.4%)であった。精査は認められなかった。6ヶ月時点での不安発症リスクに関連があるのは,高学年,負傷経験,死者の目撃であり,1年時点では,死者の目撃,極度の恐怖であった。同様に,6ヶ月時点でのうつ発症リスクは,高学年,負傷経験,死別,死者の目撃,極度の恐怖であり,1年時点では,負傷体験,死別,極度の恐怖であった。PTSDの発症リスクは,6ヶ月時点で高学年,死別,死者の目撃であり,1年時点では極度の恐怖であった。(→症状によって,発症リスクが異なること,1年後には影響が見られない変数があることに注目。1年後に見られなくなるのは,自然治癒によるものなのか?)

Fan F et al. (2011). Symptoms of posttraumatic stress disorder, depression, and anxiety among adolescents following the 2008 Wenchuan earthquake in China. Journal of Traumatic Stress, 24, 44-53.
背景:2008年5月12日に中国四川省南西部の川県(Wenchuan)をマグニチュード7.8の地震が襲い,死者69,227名,行方不明者18,222名,負傷者374,176名であった。
目的:本研究では,被災6ヶ月後に都江堰の中学,高校を対象にPTSD,不安障害,うつ病に関する疫学調査を実施した。
方法:2081名の児童を対象に,PSTD尺度(PTSD self-rating scale; cut-off score: 50),不安障害尺度(the Screen for Child Anxiety Related Emotional Disorders; cut-off socre; 25),うつ病尺度(DSRS; cut-off score: 15)を実施した。
結果:15.8%がPTSD,40.5%が不安障害,24.5%がうつ病であった。また,3つのすべてを持つ児童は8%存在し,2つの症状を併発している児童は40%であり,男児よりも女児に多く見られた。PTSDの発症リスクは,女児(OR=1.89),15歳以上(OR=1.84),家族が負傷(OR=2.39),家族が死亡(OR=2.38),悲惨な現状を目撃(OR=2.01)であった。うつ病の発症リスクは,女児(OR=1.61),15歳以上(OR=1.67),家族が負傷(OR=1.42),家族が死亡(OR=1.42)であった。不安障害の発症リスクは,女児(OR=2.23),15歳以上(OR=1.86),農村部に居住(OR=1.66),子どものみ都市部に居住(OR=0.45),家族が死亡(OR=1.48)であった。(→震災後の支援対策として,利用できる可能性あり。ただし,この研究では,震災前にすでに発症していた児童も含まれてしまう)

Swanson LM et al. (2009). A combined group treatment for nightmares and insomnia in combat veterans: A pilot study. Journal of Traumatic Stress,22,639-642.

不眠と悪夢はPTSDの特徴である。悪夢に対する治療のメタ分析では,ほとんどの治療は,有意な睡眠の改善をもたらさないことを指摘している。そこで,PTSDの診断基準を満たす退役軍人10名を対象に,10セッションの集団認知行動療法(不眠症に対する認知行動療法+エクスポージャー,リラクセーション,筆記療法?(rescripting therapy))を実施し,不眠症と悪夢の減少効果について検討した。その結果,睡眠効率(d=1.0),入眠潜時(d=0.9),総睡眠時間(d=0.5),PSQI(d=0.7),ISI(d=1.7)の不眠指標の改善が見られ,悪夢の頻度(d=0.5),悪夢(d=1.1)に対する不快感も軽減した。また,睡眠効率(85%以上)とISIのカットオフ得点を用いて,不眠症の臨床的な改善率を算出した結果,それぞれ,60%,80%であった。50%の者が悪夢の頻度が半減した。Post-traumatic Diagnostic Scaleに有意な変化は見られなかった。
(→イメージリハーサル療法と不眠のCBT(CBTi)を組み合わせた研究では,PTSD症状の改善も報告している。悪夢への治療に関しては,CBTiを実施に加えて,悪夢治療としてどの技法を使うかは検討した方がいいかも)

McEvoy PM & Perini SJ. (2009). Cognitive behavioral group therapy for social phobia with or without attention training: A controlled trial. Journal of Anxiety Disorders,23,519-528.
本研究の目的は,集団認知行動療法(CBGT)に注意コントロール訓練(ATT)を加えることで,社会恐怖の社会不安症状,抑うつ症状,注意コントロール,メタ認知的信念,予期過程,出来事後の処理過程の改善を促進するかどうか検討することであった。81名の社会恐怖患者は,CBGT+ATTとCBGT+RT(リラクセーション)に無作為に割り当てられた。その結果,両群ともにすべての尺度において症状が改善したが,両群間に有意な違いは見られなかった。また,注意コントロールは,いくつかのメタ認知的信念,社会不安症状,抑うつ,予期過程,出来事後の処理過程と負の相関が認められたことから,注意コントロールの増加が症状改善と関連していると考えられる。

Krakow B. et al.(2001). An open-label trial of evidence-based cognitive behavior therapy for nightmares and insomnia in crime victims with PTSD. Am J Psychiatry,158,2043-2047.

不眠症と悪夢はPTSDの二次的症状と考えられている。そこで本研究では,62名の犯罪被害者(身体的暴行,性的暴行;そのうち76%が児童・青年期の虐待)に対して,悪夢に対するイメージリハーサル,不眠症に対する行動療法を週1回計3セッション実施した。測定尺度は治療前および治療3ヶ月後に実施した。その結果,一週間に悪夢を見た回数(d=0.74),一週間に悪夢を見た日数(d=0.76),睡眠の質(PSQI;d=1.02),睡眠機能障害尺度(SII;d=1.23),PTSD症状(PSDS;d=0.71),不安(d=0.59),抑うつ(d=0.43)が有意な改善を示した。また,PTSD評価尺度において,臨床的な重症度レベルが1以上減少した者は53%,変化無しが36%,悪化が11%であった。改善群と無変化・悪化群の得点比較を行った結果,一週間に悪夢を見た回数以外のすべての変数において,治療3ヶ月後の改善群の得点が有意に減少していた。このことから,PTSD患者が呈する不眠と悪夢に対する介入によってPTSD症状,抑うつ,不安,睡眠の質が改善するといえる。

Krakow B. et al.(2001). Imagery Rehearsal Therapy for chronic nightmares in sexual assault survivors with posttraumatic stress disorder: A randomized controlled trial. JAMA,286,537-545.

慢性の悪夢に苦しむPTSD患者は多い。睡眠の問題は精神生理性不眠症と類似しており,「眠ることへの不安」を訴える。そこで本研究では,性的虐待を受けたPTSD患者88名に対して,慢性の悪夢に対するImagery Rehearsal Therapy(IRT)を実施し,統制群(Wait-list群)80名と比較した。IRTは週1回の3時間セッションを計2回と3週間後のフォローアップ1時間セッションの合計3回実施した。IRTの方法は,①支障をきたす夢について書き出した後,変えたいと思う夢について書き出す,②新しい夢“new dream”を10-15分間繰り返しイメージする,③反復イメージをしている間,悪夢と悪夢をどう変えたかについて簡単に書き出す,④これ以降,悪夢とどう変えたかについては一切書き出さず,心の中でイメージする,⑤毎日最低5-20分間,新しい夢を繰り返しイメージする(毎週,2つ以上の異なる新しい夢を試してはいけない)であった。また,維持効果を検討するために,3ヶ月後,6ヶ月後に追跡調査を実施した。その結果,一週間に悪夢を見た回数(d=0.85),一週間に悪夢を見た日数(d=1.24),睡眠の質(PSQI;d=0.67),PTSD症状(PSS;d=1.00,CAPS;d=1.53)が治療後に有意な改善を示し,その効果は維持されていた。治療群のうち,PTSD症状の臨床的重症度が1以上減少した者の割合は65%であった。統制群のうち,症状の変化なしもしくは悪化した者は69%であった。このことからIRTは短いセッションでPTSD患者の悪夢,睡眠の質,PTSD症状を改善することができる。

Germain A. et al.(2007). Effects of a brief behavioral treatment for PTSD-related sleep disturbances: A pilot study. Behaviour Research and Therapy,45,627-632.

睡眠障害はPTSDの中核症状であり,90%のPTSD患者が悪夢と不眠と訴えている。悪夢に対してはImagery Rehearsal Therapy(IRT),不眠症に対してはCBT-Iの有効性が示されているが6~8セッションを要する。そこで本研究では,暴力犯罪被害を受けたPTSD患者7名に対し,IRTとCBT-Iを用いた90分の1セッション治療を実施した。治療内容は,①ストレスを感じる出来事による睡眠と悪夢に関する心理教育,②イメージ修正とリハーサルの理論と実践(1,2個の新しい夢をイメージし,日中最低3回(1回5分間)リハーサルする。これを毎日繰り返す),③刺激統制法と睡眠制限法の理論と実践であった。その結果,睡眠の質の向上(PSQI;d=0.66),入眠潜時(SOL;d=0.74)と再入眠困難(WASO;d=0.66)の減少,思い出せる夢の数の減少(d=0.67)が認められた。また,日中(d=0.67)と夜間(d=0.60)のPTSD症状の減少,日中の侵入症状(d=0.89),日中の過覚醒症状(d=0.78)も改善が認められた(臨床家評価CAPS)。このことから,PTSD治療において,睡眠に焦点を当てた短期間介入は有効である。

Choy Y. et al.(2008). Features of the offensive subtype of Taijin-Kyofu-Sho in US and Korean patients with DSM-IV social anxiety disorder. Depression and Anxiety,25,230-240.

対人恐怖症は,社会不安障害(SAD)とオーバーラップすることが示されている。対人恐怖症は,恥ずかしい思いをすることに対する恐れと他者を攻撃してしまうことに対する恐れの2つのタイプが存在すると言われている。しかしながら,このタイプを考慮した検討は行われていない。そこで本研究では,米国のSAD患者181名と韓国のSAD患者64名を対象に,対人恐怖症状について検討した。その結果,75%のSAD患者が,5つの加害恐怖症状(体臭,じっと見る,表情のこわばり,腸内ガス,外見)のうち1つ以上を有していた。また,加害恐怖症状の重症度は,社会不安症状,抑うつ症状,機能障害の重症度と関連が見られた。このことから,対人恐怖症の加害恐怖は,これまで言われてきたような文化的なものではなく,SADに多く認められる症状であるといえる。

Guastella AJ et al. (2008). A randomaized controlled trial of D-cycloserine enhancement of exposure therapy for social anxiety disorder. Biolical Psychiatry,63,544-549.

これまでの研究から,D-cycloserineは,不安障害に対するエクスポージャーの効果を高めることが明らかにされている。そこで本研究では,SAD患者50名をD-cycloserine(50mg)群27名,プラセボ群23名に無作為に振り分け,投与後のエクスポージャーの効果について比較した。その結果,D-cycloserine群は,治療後,フォローアップに社会不安症状尺度(LSAS,BFNE)の得点,および生活機能の障害度が有意に軽減し,プラセボ群よりも有意に軽減した。各尺度の効果サイズは中程度であった。このことから,エクスポージャー実施1時間前のD-cycloserineの服用は,SAD症状の改善を促進すると考えられる。

Johnstone KA & Page AC. (2004). Attention to phobic stimuli during exposure: The effect of distraction on anxiety reduction, self-efficacy and perceived control. Behav Res Ther,42,249-275.

エクスポージャー中に恐怖対象に注意を向ける場合(注目群)と,恐怖対象とは関係のないものに気ぞらし(実験者と会話をする)を行う場合(気ぞらし群)の治療効果を検討するため,27名のクモ恐怖患者に対して,10分間のin vivoエクスポージャーを3回,および,4週間後に同様のエクスポージャーを1回実施した。その結果,身体症状(心拍数,発汗,血圧)に違いは見られなかったが,気ぞらし群は主観的な恐怖は治療後,4週間後において,および注目群よりも有意に減少した。また,気ぞらし群は,エフィカシー,コントロール感,行動回避テスト(BAT)でのパフォーマンスが向上した。

Wild J. et al. (2008). Rescripting early memories linked to negative images in social phobia: A pilot study. Behav Ther,39,47-56.

ネガティブな自己イメージは社会恐怖の維持要因となり,ネガティブイメージは,早期の不快な社会的体験の記憶と関連している(Hackmann et al., 2000)。そこで本研究では,そのような記憶の書き換え効果について検討した。社会恐怖患者11名に対して,週1回合計2セッション実施した。最初はコントロールセッションであり,イメージと記憶について話し合ったが,修正技法は使わなかった。第2セッションは実験セッションであり,認知の再構成を実施した。その結果,コントロールセッションでは変化が認められなかったが,実験セッションでは,否定的な信念,イメージと記憶に関する不快感と鮮明度,FNE,恐怖場面に対する不安(LSAS)に有意な改善が認められた。このことから,ネガティブな自己イメージと関連した不快な記憶の書き換えは社会恐怖の治療として有用である。

Oliver NS, & Page AC. (2008). Effects of internal and external distraction and focus during exposure to blood-injury-injection stimuli. J Anx Diord, 22, 283-291.

50名の血液-損傷-注射恐怖症患者に対して,週1回3セッションのエクスポージャーを実施した。エクスポージャーの実施に加え,「身体感覚焦点づけ」,「思考・感情焦点づけ」,「内部感覚への認知的ディストラクション」,「外部への認知的ディストラクション」を行う4群と「エクスポージャーのみ」の計5群に対象者を無作為に振り分けた。ディストラクション群は最も恐怖が減少し,特に「外部への認知的ディストラクション」は最も減少した。治療後の行動回避課題ではより多くの課題を達成できるようになり,「外部へのディストラクション」はフォローアップ時でも接近行動が増加した。フォローアップにおいて,ディストラクション群は焦点づけ群よりもコントロール感が増加した。

Kristensen AS. et al. (2008). Social phobia with sudden onset–post-panic social phobia? J Anxiety Diord,22,684-692.

社会恐怖(SP)とパニック障害(PD)はオーバーラップすることがある。この可能性として,社会状況でのパニック発作によって,SPを発症した患者がいるかもしれない。つまり,パニック発作によって突然SPを発症する者がいる可能性がある。このことから突然発症SPはSPとPDの合併症と発症年齢,外向性,不安症状の有病率が似ており,突然発症ではないSPとは異なるかどうかを検討した。182名SP,PD患者を対象とした疫学調査の結果,仮説通り発症年齢と外向性において,突然発症SPと非突然発症SPは異なっており,発症年齢は突然発症の方が遅く,外向性は非突然発症SPに負の影響を及ぼしていた。また,突然発症SPとPDとSPの合併症との間に有意な違いは認めらなかった。大うつ病との合併率は非突然発症SP(78.3%)の方が,突然発症SP(28.6%)よりも高かった。このことから,パニック発作後社会恐怖の存在が考えられる。

Masuda, M et al. (2009). A parametric study of cognitive defusion and belivability and discomfort of negative self-relevant thoughts.

Masuda et al.(2004)の精緻化論文。Word Repetition Technique(WRT)に関して,実験1(理論的説明,WRT3秒,WRT20秒),実験2(WRT1秒,WRT10秒,WRT30秒)を大学生を対象に実施した。実験1の結果,思考に対する不快感に関しては,理論的説明よりも,3秒,20秒の方が減少率が大きかった。思考の確信度は理論的説明,3秒,20秒の順に減少率が大きかった。実験2の結果,付加院に関しては,1秒よりも10秒,30秒の方が減少率が大きく,確信度は,1秒,10秒,30秒の順に減少率が大きかった。最後に実験1,2の結果がおおむね同じだったため,両結果を組み合わせ,①理論的説明+1秒群,②3-10秒群,③20-30秒群に分類したところ,不快感に関しては,理論的説明+1秒群よりも,3-10秒群,20-30秒の方が減少率が大きく,確信度に関しては,理論的説明+1秒,3-10秒,20-30秒の順に減少率が大きかった。このことから,思考に対する不快感と確信度を軽減するためには,20-30秒のWRTが有効であるといえる。

Agee JD et al. (2009). Comparing brief stress management courses in a community sample: mindfulness skills and progressive muscle relaxation. Explore,5,104-109.

本研究の目的は,マインドフルネス瞑想(MM)と漸進的筋弛緩法(PMR)の効果を比較検討することであった。43名の一般参加者をMM(n=19)とPMR(n=24)に無作為に割り振り,5週間のプログラムを実施した。その結果,MM群はPMR群よりもホームワーク実施頻度が有意に多かったが,マインドフルネス,心理的ディストレスの尺度得点は両群ともに有意に軽減し,群間に差は認められなかった。緊張感に関しては,PMR群の方が有意に軽減し,スキルの獲得感に関してもPMR群の方が高かった。このことから,短期間のマインドフルネス瞑想は,漸進的筋弛緩法より優れているとはいえないが,ストレスマネジメントしては効果があるかもしれない。

Pace-Schott EF et al. (2009). Sleep promotes generalization of extinction of conditioned fear. Sleep,32,19-26.

動物モデルでは,睡眠不足が条件づけられた恐怖の想起や消去記憶に影響を及ぼすことが指摘されている。本研究では,健常成人59名を対象に,睡眠が条件づけられた恐怖の想起や消去学習の般化に及ぼす影響について検討した。条件づけ方法として「カラーランプ(青,赤,黄色)と異なる2枚の写真の組合せ」に電気ショックを対提示した。その後,一方の条件づけのみを消去(CS+E)し,もう一方は消去手続きを行わなかった(CS+U)。次に,対象者を覚醒群と睡眠群にわけ,覚醒群は起きたまま,睡眠群は睡眠をとり,12時間後に条件づけられた恐怖の想起の度合いを皮膚コンダクタンスレベル(SCL)で測定した。その結果,睡眠によって消去記憶の保持が高まるという結果は得られなかったが,覚醒群は睡眠群よりもCS+Uに対して皮膚コンダクタンス反応(SCR)が有意に大きかった。このことから,睡眠は恐怖の消去学習の般化に影響を及ぼしていると考えられる。不安障害には睡眠障害がよく見られるため,エクスポージャーによる恐怖消去の般化を促進するためには,睡眠障害を改善するといいかもしれない。

Masuda, A. et al. (2004). Cognitive defusion and self-relevant negative thoughts: Examining the impact of a ninety year old technique. Behaviour Research and Therapy,42,477-485.

脱フュージョン(defusion)は,アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)の一技法であり,1916年にTichenerによって提案された方法である。しかしながら,脱フュージョン技法の役割についてはまだ明らかにされていない。本研究では,8名のシングルケース研究であり,事故に関連した否定的な思考に対する不快感と確信度の変化について検討した。その結果,脱フュージョン(自分と関連した単語を反復して言わせる)は気ぞらし(日本に関する論文を読む)や思考コントロール(ポジティブな独り言,呼吸法など)よりも不快感と確信度を減少させることがわかった。また,理論的説明だけでは脱フュージョンは効果がなく,むしろ思考コントロールの方が効果的であった。

Steinglass J. et al.(2007) The application of exposure therapy and D-cycloserine to the treatmen of anorexia nervosa: A preliminary trial. Journal of Psychiatric Practice,13,238-245.

神経性無食欲症(AN)に対する治療は難しく,十分な効果が得られる治療法は確立されていない。AN患者の多くは体重増加への極端な恐怖や食事恐怖を伴っている。そこで本研究では,11名のAN患者をD-cycloserine投与群とpill-placebo投与群に無作為に振り分け,エクスポージャーの効果を検討した。対象者は介入前後のテスト食事と4回のエクスポージャーセッションの合計6回の食事をした。その結果,総カロリー摂取量は治療後において有意に増加した(170kcal→445kcal)。また,ベースライン期にBMIが低い患者は介入前後の摂取量の変化量が小さい傾向にあること,食事(イチゴヨーグルトシェイク)の好きさ(liking)は治療前の方が治療後よりも高い傾向にあることが分かった(食事のおいしさで摂取量の増加は説明できない)。群間比較を行った結果,D-cycloserine群は不安とコントロール不能感(loss of control)がplacebo群よりも治療後に有意な減少を示していた。D-cycloseline群の治療後のBDIの効果サイズは大きかった(d=-1.33, p=0.06)。今回のエクスポージャー介入成果を,先行研究で行った通常治療の結果と比較した結果,平均26.80ポンド(12.16kg)の体重増加が見られたにもかかわらず,摂取量に有意な違いは認められなかった(エクスポージャー群の方が増加が大きい)。このことから,D-cycloserineの効果は十分ではないものの,摂食に焦点を当てたエクスポージャーは摂取量の増加に役立つ可能性がある。

2011-07-05